忍者ブログ

『古典物語』一章「出逢い」

静麗(ジンリー) 舞うことが大好きな森の精・・・森の小動物と毎日のように舞っている。
清穆(せいぼく) 皇太子・・・剣の達人であるが、性格は穏やかで、皆の幸せを願う人物である。


 
 宮廷では後継者争いの日々が続いていた。
 父帝は、文武両道であり、誠実な性格の「清穆」に後を継がせたいと思っていた。
 毎日の争いごとを目にして苦悩する清穆であった。そんな清穆の唯一の息抜きが森林浴。
 清穆は、時々森へ出かけていた。

 ある日のこと、清穆は森林浴に、お忍びで出かける。
 がしかし、森に入った頃、何やら人の気配を感じ、気を強めた。
 パタパターと鳥たちが舞い上がったと思った瞬間!
 突如、十人ほどの覆面をした男たちが現れ、囲まれる。

「何者だ!」
 清穆のその問いかけを無視して、男たちは一言も発さずに、いきなり切りかかってきた。
 清穆は身を守るために、剣を抜き、闘う。
 見事な剣捌きであったが、どの相手にも止めを刺すところまでは、しなかった。
 歯が立たぬと悟った男たちは、退散していった。

 清穆は泉の水を大きな蓮の葉で掬い、土の上で血で汚れた刀を洗っていた。
 暫くすると、花の甘い香りがしてきた。
 何気に振り向くと、そこには未だかつて見たことが無い、美しく可憐な若い女性が立っていた。
 その姿はまるで羽衣を纏った天女のようであった。背後からは木漏れ日が射して、輝かしく神々しくもあった。

「驚かせてしまい、すみません」
 その声も可憐で、心地よく耳に響いた。
「泉を汚してしまったかもしれません」
 清穆は深く頭を下げて謝る。
「いえ、湧水ですので大丈夫です。それより、お怪我はなかったですか?」
「はい、怪我はありません」

「わたくしは、静麗と申します。この森で暮らしています。よろしかったら喉を潤されませんか?」
 微笑みを浮かべながら、静麗が言った。
「それは有り難いです。もう喉がカラカラで……」
 清穆もそう言って微笑んだ。

 静麗は森に時々やって来る清穆を目にするごとに、惹かれていた。
 その時は、もちろん清穆には静麗の姿は、まだ見えていないのであった。




小説ブログ 短編小説




拍手

PR

Comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

Copyright © 如月雫雪の「詩、小説」 : All rights reserved

「如月雫雪の「詩、小説」」に掲載されている文章・画像・その他すべての無断転載・無断掲載を禁止します。

TemplateDesign by KARMA7
忍者ブログ [PR]