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『古典物語』二章「静麗の家」

静麗の家は、こじんまりとした円形の家であった。
 周りにはリスやウサギ、バンビ、小鳥たちが遊んでいた。
 
「狭い家ですみません。どうぞお掛けになってください」
 清穆は静麗に勧められた丸い椅子に座る。
 そして、複数の果物で作られた冷たい飲み物を頂いた。
「うー美味しい! 生き返るようです」
「おかわりもありますよ」と静麗は笑顔で言った。
「では、お言葉に甘えてもう一杯頂きます」
「はい、かしこまりました」そう言って静麗は嬉しそうに器に飲み物を注ぐ。

「申し遅れましたが、わたしは清穆と申します」
「あの宮殿にお住いの皇太子さまですね」
 静麗にそう言われて少し驚く清穆であった。

「ここに住まわれて、もう長いのですか?」と訊いてみる清穆。
「まだ三ヶ月ほどです」そう言って肩を竦めて、クスッと笑う静麗。
 そして言葉を続けた。
「もうお分りかもと思いますが、わたくしは、人間ではありません。森の精でございます」
「森の精?」驚く清穆であった。
「不思議ですか?」
「はい……」
「こちらで時々森林浴をされる清穆さまのことを、見ていました」
「え? そうでしたか」少し、はにかむ清穆。
 静麗は、そんな清穆を優しく見つめる。

「森の精は、人間の姿をしているのでしょうか?」
 不思議さのあまり、訊かずにはいられない清穆であった。
「いいえ、それは、わたくしが望んだからです」
「そうなのですね」清穆はあっさりと納得していた。
 もっと訊いて欲しいと思っている静麗に気づいていない清穆だった。

 静麗は清穆に惹かれているということを伝えたかったが、逸る気持ちを抑えた。
 清穆が驚いて、ここにもう来てくれなくなったら……
 そんな気持ちが働いたからである。

「また、ここに来てもよろしいですか?」
 清穆のその言葉に喜びのあまり、満面の笑みを浮かべて静麗は答える。
「もちろんです。その時は是非、舞を観てください」
 静麗の天使のような可愛い笑みに、清穆は突如胸が高鳴っていた。

「舞ですか? それは楽しみです」


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