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『古典物語』第五章「寄り添うふたり」

数日も経たないうちに、清穆は静麗の所にやってきた。
 今日も先日と同じお菓子と、新たにドレスを持ってきた。

「サイズが合えばよいのですが……」心配そうに手渡す清穆。
「わー素敵な色ですね。秋の森の色ですね」静麗は胸の前に合わせて、嬉しそうに微笑む。
「おおー色白なお肌によく映えます!」清穆も嬉しそうに言った。
「着替えてきますね」と静麗は早足で着替えに行く。
 

 清穆も今日は秋の森の色の装いである。静麗に合わせたのであった。
 

 新しい秋の森の色のドレスに身を包んだ静麗が登場!
「おおーなんと! 美しい! とても似合っています」清穆は満面の笑みで言った。
 クルクルと回って見せる静麗……
「こんな綺麗なドレスを頂いて、天にも昇るほど嬉しいです」
 そう言って静麗は清穆の手を取り外に出る。
 

 静麗は清穆の、もう片方の手も取って歌を歌いながら踊り出した。
 清穆はそんな静麗が愛しくて、抱き上げる。
 そのあと、そっとおろし抱き寄せた。



 ふたりは見つめ合う。
 そして、唇を重ねた。
 清穆は、ほんのりと花の香りがする静麗を可憐に思った。

 ふたりは部屋に戻り、肩を寄せ合い、長椅子に腰を掛けた。

「静麗さん?」清穆が言うと
「静麗でいいです」と静麗は微笑んだ。
「では、静麗? 私に何か望むことはありますか?」清穆は唐突に訊いてみた。

「私……森の精なのに、清穆さまに恋をしてしまいました。清穆さまのお姿を見る毎に胸が熱くなって……」
 清穆は静麗の肩をそっと抱く。
 
 静麗は続ける。
「そうしたら、いつの日か私の姿が人間になったのです。そのあと、清穆さまの前に姿を見せることも出来ました。そして、清穆さまに近づく毎に体の内部にも、何か変化が起きています」
「そうですか。それって、だんだん本格的に人間に近づいていると解釈してもいいのでしょうね」
 清穆は、そう言った。
「はい、そうであるならば、とても幸せです。清穆さまが、私を愛おしく思ってくださったからだと嬉しく感じています」
「私の愛で静麗がどんどん人間らしくなるのであれば、人の魂が宿るのであれば、私にとっても、それはとても幸せなことです」
「清穆さまも、そう感じて下さるのですね」
「はい、私にとって、もはや静麗はかけがえのない存在です」
「ほんとうですか!」静麗は清穆の瞳を見つめて言った。
「静麗に人としての魂が宿れば、私の妻に迎え入れることが出来るのですから」
 そう言いながら、清穆はこんなに嬉しいことはないと言わんばかりに瞳を輝かせた。
「……」静麗は感激のあまり涙を浮かべて言葉が出てこない……
「静麗……」清穆はそんな静麗を抱きしめるのであった。

「清穆さま……」静麗が神妙な表情で清穆を見つめる。
「はい」清穆は静麗の言葉を待った。
「清穆さまは、一生、静麗を愛し続けてくださいますか?」
「もちろんです」即答する清穆。
「浮気もしませんか?」
「しません」と即答する清穆。  
 静麗の、あまりの真剣さに「何故、そんなことを訊かれるのかな?」と清穆は言った。
「清穆さまの愛が静麗に向けられなくなったり、清穆さまの、お命が天に召される時、静麗の人としての魂も消滅致します」涙をいっぱい浮かべて静麗は伝えるのであった。
「……」暫く言葉が出なかった清穆。
「静麗……貴女への愛は決して止むことはありません」
 そう言って清穆は静麗を強く抱きしめた。
 そして、ふたたび唇を重ねるのであった。


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